保護者のお尻を叩くだけでは逆効果

私たちは2007年からこの活動を続け、様々な場所で保護者向け講演会を行なってきました。
その中で保護者の現状を感じ、デジタル音痴と言われる親世代でも子どもと向き合える方法を模索し続けています。

誰にでも苦手な事の1つや2つはあるでしょう。苦手な事は「こうしなければいけない」とわかっていても目を背けたくなるものです。
だからパソコンやケータイ等デジタル音痴と思っている保護者に「子どもにインターネットを使わせるとこんな危険がしのびよる」「フィルタリングをかけ、親がしっかり見守りをしないといけない」という正論を説いても、それが即保護者の行動に結びつくとは限らないのです。

まずは保護者の現状を認める事が必要です。
幸い私も現役保護者です。自分の青春時代はパソコンもケータイもなかった。たまたま仕事で必要があり、たまたま興味が湧いたのでパソコンやインターネットが好きになりましたが、そうではない保護者がたくさんいる事も理解できる。

「お子さんの方が詳しいから口出ししづらいですよね?当然ですよ、子どもとは育った時代が違うんですから。み~んなそうですよ」と話します。
自分だけが社会に取り残されているというコンプレックスを少しでも拭って欲しいからです。

ある時ママ友から中古パソコンを購入したが、もろもろの初期設定がわからないと相談をもちかけられました。最初は電話でアドバイスをしていましたが、近所なので行った方が話しが早いと思い、出かけて行きました。

彼女もご多分にもれず自称デジタル音痴です。しかしお宅に着いてパソコンの状態を見てみると、9割設定が済んでいるのです。私に電話をかける前に色々なサポート窓口に電話をして聞いたり、説明書と格闘したらしいです。

「ここまでできれば上等!何も間違っとらんよ!正解!」と彼女に言うと「ほんと?これでいいと?よかったー」と嬉しそうにしています。「最後に誰かに正解!って言って欲しかったっちゃろ?その最後の確信がなかったっちゃろ?」と言うと「そうたい、そうたい」と笑っていましたが、その目が少し潤んでいました。
仕事でもパソコンを使っている彼女ですが、バリバリ使いこなせる若い子達に囲まれ、コンプレックスまみれで孤軍奮闘していたようです。
「サポート窓口の探し方も適切やし、用語もだいぶんわかってきたろ?」と言うと「そうやね、聞いてるうちに慣れてくるね」と言っていました。デジタルに対する苦手感が多少でも払拭できた瞬間ではないでしょうか。(会話が博多弁ですみません^^;)

せっかく講演会に足を運んで「フィルタリングをしなきゃ!」と思っても、いざパソコンの前に座ると「これでいいのかなぁ、パソコン壊さないかなぁ」とドキドキして何もできない保護者も多くいると思います。

その一歩を踏み出してもらう為には、ハードルの低いところからスタートする事を勧めないといけないと思います。だから「とりあえず帰ったらパソコンの電源を入れてみましょう。今日の晩御飯のレシピでもいいし、ママ友と出かけるランチ情報でもいい、何かしら自分の興味が湧く事を検索してみましょう。」と声かけします。

そこからでいいのです。「親がネットやパソコンの勉強しないと子どもが危険にさらされる。それでもいいんですか?」と親を追い詰めて終わる啓発は、逆効果だと思っています。


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