中学生が自ら考えたネットルール(熊本市立江南中学校の事例)

2014年7月25日 青少年の「ネットルール」を考えるフォーラムin熊本が開催されました。

青少年のインターネット環境が大きく変化する中、トラブルや事件が相次ぎ、愛知県刈谷市が「夜9時以降は携帯、スマホを使わせない」というルールを宣言したのを皮切りに、各地で自治体や学校が同様のルール策定をしています。

しかし、大人が作ったルールを子ども達はどう感じているのでしょう。

ルールの必要性を子ども自身が感じていなければ、単に大人の押し付けとしか思えず反発も起きます。
大人が作ったルール・・・私は違和感を覚えていました。

そんな時、この問題に精力的に取り組んでおられる桑崎剛先生(熊本市立総合ビジネス専門学校教頭/安心ネットづくり促進協議会特別会員)から「熊本の中学生(江南中)が自らルール作りをした。その事例発表と今後どう広げて行くかを考えるフォーラムを開催するので、パネルディスカッションに参加して欲しい」とお声をかけて頂き、ワクワクしながら出かけて行きました。

 

まず桑崎先生より子どものネット利用についての基調講演が行われ、その後江南中の生徒さんによる事例発表が行われました。

江南ルールができるまでの過程に反対意見もあり苦心したこと、ルール作りをして一ヶ月後にアンケートをしたところ「心が傷つく書込みが減った」「スマホのマナーを守る人が増えた」「学校での悪口が減った」など多くの改善点が見られたものの、完全に守られていない点をどう克服するか等の課題点を、寸劇を交えわかりやすく立派に発表してくれました。

こちらが彼らが作った「江南ルール」です。

ルール1 健康を守ろう
1.10時以降は、情報通信をしない
2.寝るときは、極力電源を切って、返信や投稿をしない
ルール2 友情を守ろう
1.見た人が傷ついたり不愉快に感じたりする言葉は使わない
2.悪意のあるグループを作らない・入らない
3.相手の身になって考える
ルール3 プライバシーを守ろう
1.個人情報をネットに載せない(画像・氏名など)
2.誰にでも見せられる情報・言葉しか書き込まない
3.知らない人からの書きこみは無視する

 

その後のパネルディスカッションでは、この生徒たちを束ねてこられた高木雅子教諭から、種明かしがされました。

驚くことに、ルールを作る段階では先生方はほとんど口を出していないのです。
先生方が一丸となって取り組まれたのは、ルールを作る以前の「土壌づくり」だったのです。

先生のご発表より一部抜粋します。
「教師ができる土壌づくり」
1.話し合いができるスキルを身につけさせる
2.自分を表現できる場をつくる
3.みんなの役に立つ実感を持てる機会をつくる
4.互いの考えや気持ちを交流できる場をつくる
5.素敵な大人にたくさん出会わせる

最終的に子どもに求めることは

幸せに生きる力をつける
・自分を大切にできる
・人を信頼できる
・自分で考えることができる  であると。

パネルディスカッションの中でルール作りの推進委員の生徒さんに「反対意見が出てきた時、どう思いましたか?」と大人から質問が出た時に、彼女は「みんな一生懸命考えてくれているんだと思いました」と答えていました。

困るでも、怒るでもなく、反対意見を出してくれる子の気持ちが嬉しかったのだと思います。先生方が取り組まれた土壌が子どもに浸透していると実感できる声でした。

高木先生が仰っていた「我々は青少年『の』ネットルールを考えるではなく、青少年『と』ネットルールを考えてきた」と言う言葉が印象的でした。

基調講演で桑崎先生が「スマホが悪さをするのでしょうか、使う人の問題です」と言われた言葉もその時蘇りました。

現実的に考えて、子ども達はこれからもインターネットを使いながら成長して行きます。
しかしインターネットを安全にかつ使いこなす為には大人同様の能力を求められます。
コミュニケーション能力、道徳心、正義感、ルールや法律の知識 etc.
それらを備えた人間になるのは大人でも難しい。未熟であるならば、それを自覚し成長しようと行動しなければならないのです。

子どもがネットを使いこなすためには、たくさんネットを使ってネットの達人になることではなく、人間力を高める事の方が大事・・・という気がしてきませんか?

今回、学校での土壌づくりの事例を見て教師の本気を見せつけられたと思いましたが、本来ならその根底に家庭での土壌づくりが必要なはずです

家庭で一人ひとりの子に向き合いその子に土壌ができてこそ、集団で良い話し合いができるのだと思います。

我々保護者も「ネットのことだからわからない!」と尻込みせず、子どもが幸せに生きる力を身につけられるよう向き合っていきましょう。

(参考)江南中の取組が日本経済新聞のWEBサイトでも紹介されています。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO74902270Z20C14A7NNMP01/


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です