福岡市地域情報化市民セミナーの講演を聞いてきました

エルガーラ大ホールに集まった聴講者の多くはシルバー世代。中村伊知哉氏の中高年向けのパソコン番組を見てファンになった方でしょうか。それとも円丈師匠の落語目当てでしょうか。

特別講演 総務省九州総合通信局の部長さんより国内の、そして九州のブロードバンド整備と利活用状況の報告があり、そして青少年のインターネット問題にも話しが及びました。
が!子どもが携帯を持つようになって子どもがネットで被害に遭う事例が増えた、保護者がフィルタリングをしなければならない、その次に大事なのは家庭でのルール作りだと。そう、お約束の文言です。
きっと聴いていたシニア世代は「親がなっとらん!子どもが携帯やら持つからイカン!」と心の中で息巻いていたことでしょう。
子どもや家庭に問題を押し付ける結果に終わった気がしました。時間の制限もあったので仕方ないのでしょうが。

次は福岡市から市のインターネットサービスの紹介。

そして中村伊知哉氏の講演です。中村氏の話しを聴くのは2度目ですが、人を惹きつける喋りをなさいますね。
9・11の事、京大カンニング事件、そして今回の東日本大震災と、人々の関心が高い出来事の裏でインターネット社会がどう動いていたかをわかりやすく興味深く説明してくださいます。
その他にも2011年TIME誌のパーソン・オブ・ザ・イヤーに田代まさしが1位を獲得した事。それは2ちゃんねるユーザーが組織的に投票した結果だったとか、世界のブログで一番使われているのは日本語だと言うこと。なぜか・・・日本は若者が携帯から投稿する文化があるからだとか。
中村氏は若者がインターネットを使う事を否定しません。逆に若い人がデジタルを使うスピードは加速する一方、社会や大人の受け皿が追いついていないと警鐘を鳴らします。

私もその点は同意します。危険があるから子どもからインターネットを遠ざけようというのは対処療法でしかない。もっと前向きに子どものネット利用を捉え、子どもも使える安全なネット環境づくりに邁進するべきだと思っています。

そして中村氏は日本の学校に世界一のデジタル環境を整えたいとおっしゃいます。
これはどうでしょう。
学校にパソコン教室はあれども、普通教室全てにパソコンが配備されているわけではない。それどころかLAN環境のない教室もある。児童生徒1人1台端末を使わせて・・・より先に、パソコンとプロジェクタを各教室に配備(LAN環境は当然必要)。そして教材提示から始めるべきだと思っています。

先生のスキルアップも必要です。しかし先生は仕事に追いまくられています。年代的にITが苦手な先生も多くいます。
とあるシンポジウムで学校の情報モラル教育を取り上げていた時に、中学校の先生が「家庭でやるべきことではないか。我々に勉強を教える時間をください」とまでおっしゃいました。それほどに学校のマンパワー不足は切実なのです。

これを解消する為には外部専任講師を投入するべきだと思っています。各自治体毎にICT支援員を雇用していますが、小中学校全てに支援員がいる地域もあれば、全くいない所もある。支援員がいても月に数回程度の来校だったり充分とは言えません。

このような状況から一足飛びに世界一の学校デジタル環境は厳しいのではないでしょうか。
中村氏の講演はたった40分しか用意されておらず、もっと展望の詳細をお聞きしたかった。残念です。

さて、トリは落語家の三遊亭円丈師匠です。なんとパソコン歴30年だそうです。プログラムが組める唯一の芸人とおっしゃっていました。
私はてっきりICTをお題にした落語を聞けるのかと早とちりをして出かけたのですが、ご自身が30年間パソコンで四苦八苦したご経験を面白おかしくお話しされて、最後に古典落語の強情灸を見せて頂きました。
落語を生で観るのは初めてで、それだけでも来た甲斐があったのですが、師匠がおっしゃった言葉で大きく印象に残った事があります。

「なぜパソコンはわからないのか。パソコンってやつは難しいんです。だってあいつらは0と1でしかモノを考えないんですよ。理解できるはずがない。わからないのがあたりまえなんです」と。

つまりパソコンがわからないからと言って気落ちすることはない。逆にわからない事を楽しむくらいの余裕を持って向き合って欲しいというメッセージではないかと思いました。シニア世代の方が「ちょっとデジタルの世界を覗いてみようかな」と思った瞬間ではないでしょうか。

会場に出かける前、70代の母が最近シニア向け携帯に変えたと言う話しをしていて、「もうね、頭に来るくらい親切なのよ!」と怒っていました。「そのくらいはわかってる!」事まで教えてくれるらしいです。携帯が(笑)

これからもっと色んな世代がインターネットと密に接して行きます。それぞれに適したインターネット社会になるかどうか。それは行政、IT事業者、学校、家庭、どこかに責任を押し付ければ解決するものではないと思います。ネットユーザー一人一人の意識が流れを作っていくのだと思っています。そして将来を担う子どもの為の環境づくりは優先的に行わなければいけないとも。


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